子どもに叱りたくないのに本気で怒らないとわかってくれない。私は怒ってばかりのダメな保育士だ。どうしたら怒らないで済むんだろう。
新任だけでなく、どの先生も一度はこの悩みを抱えていると思います。
世間では「叱らない保育」という言葉が浸透し、親による体罰も法律で禁止されるようになりました。
ですが、この「叱らない保育」は決して何があっても叱らないという意味ではありません。
人間は完璧ではないので必ず間違いを犯します。
その時、誰かが軌道修正をしてあげなければ、我慢のできない自分勝手な人間が出来上がるでしょう。
この記事では、そんな叱らない保育の本来の意味と、具体的な叱り方を解説していきたいと思います。
「叱らない保育」というのは「感情的に叱らない」ということ
「叱らない保育」という言葉を間に受けて、子どもに何も言わないというのは大間違いです。
先ほども言ったように、子どもは完璧な人間ではありません。むしろ失敗の方が多いくらいです。
子どもの頃にきちんと社会性やルールを学んでいないと、自立した大人になることが難しくなります。
そこで、初めて集団生活を送る保育園や幼稚園では、人に迷惑をかけない、危険なことをしない等、社会的ルール教えていくことが必要になります。
「叱る」という行為はそんな社会的ルールを伝える手段の一つです。
また、この叱らない保育の大きなポイントは「感情的に」叱らないということです。
保育の現場では多いと一人で30人の子ども達を見ていかなければなりません。
相当なリーダーシップが必要になるのです。
時には少し声を大きくしてきちんと子どもたちに伝えることは、クラスのまとまりを作るためには必要です。
クラスにいい意味の緊張感がなければ、子どもが好き勝手に動いてしまうクラス崩壊が起こってしまいます。
ただし、ここでポイントになるには「頭は冷静でいること」です。
これは非常に難しい叱る技術なのですが、自分が女優や俳優になった気で「叱る演技をする」ような感覚です。
ある程度感情を言葉に乗せながら、あくまで頭は冷静に、子ども達に何を学んでほしいのかをきちんと伝える。
聞くだけで難しいですね…。
そう、これはかなり上級テクニックです。
一歩間違えればクラスを恐怖で支配する恐ろしいだけの先生になりかねません。
ですが、そこにきちんと先生の意図とねらいがあって、子ども達に伝えたいことがあれば、子どもは受け取ってくれるはずです。
大前提としてこれは最終の最終の最終手段くらいに取っておいてくださいね。
本来なら、こうならない方が確かに理想ではあります。
まずは信頼関係を築きましょう。
でたー!!信頼関係!!保育士をしていると本当に耳がタコになるくらいよく聞きます。
ですが、この信頼関係がなければ子どもを叱ったところでそもそも話を聞いてくれません。
もしくはとりあえずその場をやり過ごすために謝ったりと、表面的な解決しかできません。
同じことを言っているのに、新任と経験のある先生では子どもの受け取り方が違うのはこの信頼関係を日ごろから意識しているかどうかなのです。
信頼関係に関する記事はこちらでも書いているので参考にしてくださいね。
子どもを叱る前に、子ども自身が気づいて行動修正できるように促す。
子どもはなぜか、大人がしてほしくないことが大好きです。
水が好き、高いところが好き、ダメって言われるとやりたくなっちゃう!!叱られるとわかっていても…。ついつい体が動いちゃうよ~~!
まだまだで、興味の赴くままに動いてしまうので仕方ないと言われればそうですね。
でも言わねばならぬのです…水の出しっぱなしはもったいないし、高いところにのぼって大けがをした後では遅いのです。
これをひとつひとつ
も~~~!!ぴよ太郎君!お水の出しすぎ!!
ぴよ次郎君はそこに上らないって何回も言ってるでしょう!!
ぴよ美ちゃんは大きい声出しすぎぃ!!
と、言っていてはきりがないですし、クラスの雰囲気も悪くなります。
出来れば子ども自身が自分で気づいて行動修正出来るのが一番いいです。
子どもも先生に言われて辞めるよりも、自分で気づいた方が素直に辞められます。
私はよくこの5段階を踏んで、なるべく声をかける前に子どもが行動を正せるよう心掛けています。
例えば片づけの時間に片付けをしないで遊んでいる子がいた場合として、具体的に紹介します。
- まずは出来ている子を褒める。
(これだけでほとんどの子は「僕も」「私も」と片付けを始めます。
それでも片づけない子は↓↓) - 片付けない子を静かに目で追う。
(その子がわかっていて片付けないのなら、よくないことは分かっているのでこちらをちらちら気にしながら遊び続けています。
そういう子はじーーーーーっと見られる保育士の目線に耐えられなくなり「やっぱダメですよね。」というように片付け始めます。
ところが、中には「いや、まだ先生何も言ってないし…」と、ギリギリまで粘る子もいます。
そういう子は↓↓) - 「あれぇ?」「あー!」「〇〇君・・・」など、少し大きめの声でいう。
(実際に細かいことを言われなくても、これだけでその子には言いたいことは十分伝わります。
「やっぱ先生気づいてた。」「これ以上はマズイ」というのが、子ども達は経験上分かっています。
それでも「いや、まだいける」というよくわからない自信を持ったタイプの子もいます。↓↓) - 近くまで行く。
(いよいよ近づきます。
「わぁ、こっち来た!!」と、片付けだすか、おろおろするか、そもそも目線も声掛けも遊びに夢中になって気づいていないパターンもあるからです。) - それでも辞めない時は、目を見て止める。
(ここまでしても辞められなかった子に対しては、ようやっと話をしにその子の前に行きます。)
本当は叱りたくないのに、と悩む先生へ
ここまでしても、行動を改めてくれない子にはどうしても叱る場面が出てくるはずです。
ですが、先述している通り、叱るということは決して悪ではありません。
反対にこの先生は叱らない先生なんだと思うと、子どもの行動はどんどんエスカレートしていきます。
年齢が上がるに連れて、精神的な成長、内面が複雑になっていき、要領よく生きていくすべを身に着けていきます。
言葉は悪いですが、ずる賢くなるのです。
先生によって態度を変えたりすることもあります。
やられた先生はとても傷つくし、なめられているのでは、と焦りますよね。
だからといって、大声で怒鳴ったりするのはほとんど子どもの心に響かないし、信頼関係にもヒビが入るので逆効果です。
それよりも信頼関係づくりを頑張りましょう。
自分の話を聞いてくれる、よく遊んでくれる、いつもよくしてくれるから、こっちも話を聞いてやってもいいかな。と、子どもが思ってくれるようにしましょう。
都合のいい大人にならない様に注意。
ただし、あくまで先生、大人として関わりましょう。
子どもとの距離を近づけるために、子どものご機嫌を変に取ったりする必要はありません。
子どもの友達、お母さんにならないようにしましょう。
保育士をあだ名で呼んだりするのは、そのあたりの境界線が曖昧になるので私はあまりお勧めはしません。
(もちろん天性の才能で上手に関われる先生もいますが、子どもとの距離感で悩んでいるのなら、きちんと「先生」と読んでもらった方が無難です。)
子どもも人間です。
甘えるときは甘えてくるが、いざ動いてほしい時には動かない。
実習生と子ども達を見ていると、この関係が多いですよね。
実習生はまだ経験も少なく、子ども達に強くも出れないので都合のいい大人になりがちです。
(関係も長くて2週間ほどなので、ある意味それでもいいと思います。)
信頼関係を作る=子どもの言いなりになる。ではないので気を付けましょう。
信頼関係を築きつつ、叱る場面では冷静に…出来るなら場所を変えて一対一で諭すように話せるといいです。
多少、言葉がきつかったり、そんなこともダメなの?と、少々厳しい先生の方が子どもも素直に動いたりクラスも落ち着いています。ルールがはっきりしているので子どもも迷うことがなくなるからでしょう。
このバランスが本当に難しいですね。厳しくしすぎて恐怖で押さえつけてもいけないし、かといって受け入れすぎても、都合のいいように好き勝手に動かれてしまう。
優しい先生ほど「かわいそうだな」「このくらいならいいかな」と基準が甘くなり、そこに付け込まれてしまうので気を付けたいです。
かといって、優しい先生が無理をして厳しく接してもうまくいきません。
人はそれぞれ個性を持っていて、無理に自分を変えようとしてもお互いに違和感しかなく、うまくいかないことが多いです。
マニュアルがあるわけではなく、自分にあった叱り方を見つけていくしかありません。
これは時間のかかる事なので、新任がなかなか話を聞いてもらえないのはある意味仕方がないことです。
いろんなパターンを試したり、他の先生がどんな叱り方をしているのか観察したり、保育書を読んで勉強したり、子どもによって叱り方を変えたり、思考停止にならないで自分にあった伝え方を試していくことが大切です。
子どもの心に響く具体的な𠮟り方
お待たせしました。やっと具体的な方法を紹介します。
基本的に叱るというより話し合いというスタンスで子どもに臨みましょう。
叱り方も、子どもによって変えていくようにしましょう。
ここでも「片付けをしない子」という例で具体例を考えていきたいと思います。
まずは人の話を素直に聞ける子(家で受け入れられており、自己肯定感がある)で考えます。
メリハリのついた保育をするため、叱るポイントを意識しながら話していきましょう。
- 感情的になりそうなときは、そうならない様にあえて敬語を使う。
- 否定ではなく、どういう行動をすればよいのか短く分かりやすく伝える。
- 「いつまで遊んでるの?」「もう遊びません!」→「片付けましょう」
- 座って目線を合わせる。
- どうしていけないのか、理由を伝える。子どもに考えさせてもいい。
「片付けないと、給食を食べられないよね」「どうして片付けないといけないと思う?」 - 子どもが辞めればそれ以上言わない。
自己肯定感が低く、叱ろうとするとそれだけで反発し受け入れられない子
- まずは、極力自分で気づいて行動修正するように促す。
- それでも辞めない時は話し合いのスタンス。声を荒げるとそれだけで拒否反応が出ます。
- その場で話が聞けない場合は、静かな場所に移動する。
- まずは話を聞く。
「どうして片付けないの?」
- 気持ちを受け止めてあげる。
「あと少しで完成しそうなんだね。」
- サンドイッチ法で伝える。
サンドイッチ法とは褒める→叱る→褒めると、間に挟むことで話を聞いてもらいやすくする方法です。
「いつもブロックですごいものを作っているもんね。→でも、先生はきちんと片づける時間を伝えていたし、新しく作り出して間に合わないのは困ります。→途中の物は取っておいて、またあとですごい作品を作ろうね。」
- あなたメッセージではなく、私メッセージを意識する。
「あなた」を主語として伝えると相手は否定されているように感じます。
「わたし」を主語として伝えると自分の気持ちを伝えるので相手は自分の行動を客観的に捉えられるようになります。
例)「(あなたは)早く片付けなさい!」「(あなたは)いつまで遊んでいるの?」
→「片付けてくれると部屋がきれいになって(私は)嬉しいな。」「散らかったままだと給食が食べられなくて(私は)困るな。」
一回叱っただけで子どもは変わらないということを頭に入れておく。
人を変えるということはとても難しいことです。
大人も一回言っただけでなおるんだったら人間関係苦労しません。
「あんなに真剣に伝えたのに」「何回も言っているのに!!」と、思うと変わらない子ども達に苛立ちを感じてしまいます。
そうではなく、「すぐに人は変わらない」ということを頭の片隅に入れておくこと。
「あの子はできているのに何でできないの」と、他人と比べるのではなく「前はこうだったけど出来るようになったね」と、その子が自身と比べてあげましょう。
そうすると、イライラが少し減ると思います。
同時に日々の保育の中でその子の自己肯定感をあげるように接しましょう。
自己肯定感は褒めることで伸びます。逆に否定されることで自己肯定感が低くなります。
素直に言われたことを受け止められるために、心の土台を育てていきましょう。
褒めることについてはこちらの記事で解説しているのでこちらも読んでみてくださいね。
まとめ
①褒めるのを8割り、叱るのを2割りぐらいを意識しよう
②褒めて自己肯定感を伸ばそう
③なるべく叱らずに子ども自身が自分で気づいて行動を改められるようにしよう
④それでも行動を改めない子には、きちんと伝えよう。
⑤短く、なぜそれをしてはいけないか理由を明確に
⑥自己肯定感の低い子の叱り方には注意しよう
⑦一回叱っただけでは変わらないということを頭に入れておこう
きっとすぐには出来ないと思います。
でも「私はダメな先生だ」と、あまり自分を追い詰めないでくださいね。
わたしも10年以上やってきても、うまくいかないこともあります。
特に自己肯定感の低い子は家庭からの問題を抱えていることがほとんどだと思います。
自分ではどうにもならないことはSOSを出して周りの先生に助けてもらいましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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